

株主の皆様へ
日清食品有限公司(以下「当社」)董事会(以下「董事会」)を代表し、当社および子会社(以下「グループ」)の 2024年度の年 次報告書をお届けさせていただきます。
2024年、中国の GDP成長率は年率5%増となりました。24年上半期の個人消費は節約志向が継続し厳しかったものの、下 半期からは個人消費への刺激策が取られ、変化の兆しが出てきました。香港は GDP成長率が年率 2.5%とプラス成長であっ たものの、個人消費は厳しく、特に北上消費の影響を受けました。週末を大湾区で過ごす人が増加し、香港の小売店売上 は低調でした。こうした状況の下、当社グループは、創業者 安藤百福氏の『食為聖職(食の仕事は聖職である)』という 企業理念のもと、食の美味しさ、楽しみ、喜びを通じて、人 々の健康と社会の発展への貢献を心がけてグループの運営を行ってきました。
2024年の当社グループの売上収益に関しては、中国大陸および香港での消費者の購買意欲が低迷する中で、冷凍食品や日本産の輸入お土産菓子・飲料などの売上が低迷しました。一方、全地域で即席めんの販売ボリュームの増加に注力したこ とにより、人民元安の影響があったものの、前年同期でほぼ横ばいの 3,811.9百万香港ドルになりました。24年度第4四 半期だけで見ると、即席めんの販売ボリューム増によって前年第4四半期と比較すると 8.4%の売上成長となりました。
利益に関しては、粗利益額は、2023年11月より新規に稼働した香港の新生産設備の稼働による減価償却費増があったも のの、即席めんの販売数量が増加し単位当たりの固定費が減少し、前年比 0.7%増の 1,312.1百万に増加し、粗利益率も 34.0%から 34.4%と改善しました。営業利益は、販促費、物流費などの増加により 417.4百万香港ドル、前年比 4.2%の 減益となり、営業利益率は 11.4%から 10.9%へ低下しました。一方、即席めんへの注力により、当社グループの即席めん の補完事業であるノンフライめん、ロングライフめん、冷凍食品などの収益性が当初の計画よりも悪化し、更に今後の経 営環境を考慮すると厳しさは続くと予想されるため、香港の会計基準 36号に沿 って、非即席めんカテゴリーを中心に減 損損失を 135.9百香港ドル計上しました。その結果、当社の株主に帰属する当期純利益は、前年比 39.1%減となり前年度 330.2百万香港ドルから 201.0百万香港ドルに減少し、利益率は 5.3%になりました。なお、本業のビジネス状況の評価の ため、一時的な非現金費用を除いた調整後 EBITDAは上場以来安定的に増加し、前年比 0.8%増の 612.5百万香港ドルにな りました。
株主還元に関しては、株主に帰属する純利益は減少したものの、EBITDAなどの本業からのキャッシュフロー 創出力は安定 的に推移し、更に当社グループ会社のバランスシートは健全であるため、24年度の株主還元に関しては、普通配当を一株 当たり 9.63香港セント、特別配当を一株当たり 6.19香港セントとして、配当金額を前年と同じ一株当たり 15.82香港セン トとしました。配当性向は、普通配当の配当性向を 50%(前期の配当性向 50%)、特別配当を 32.1%(前期の特別配当は なし)になり、合計で 82.1%となります。現金及び現金相当額も昨年とほぼ同様のレベルで推移中です。
当社ビジネスの拡大を目的に、買収並びに合弁会社の設立を実施しました。2024年 6月、韓国のスナック菓子メーカー Gaemi Foodを買収しました。同社はクリスピーロールの国内シェア No.1を誇り、ハラル認証を保有しています。
2024年 9月には、オーストラリアの冷凍餃子・小籠包メーカーABC Pastryを買収しました。オーストラリアではアジア系移民の増加に伴い、餃子や小籠包の需要が高まっています。買収後、既存顧客の引継ぎを完了し、オーストラリア全土で の販売拡大を進めています。
2024年 11月には日清食品ホールディングスの東南アジア統括会社と合弁でオーストラリアやニュージーランドで日清ブラ ンドの即席めん販売を促進する合弁事業であるオーストラリア日清を立ち上げました。
2024年度、当社は中国大陸での販売促進に注力しました。特に、カップヌードル(合味道)の試食プロモーションを主要 都市で実施し、3万回以上の試食を通じて商品の美味しさをアピールしました。また、中国大陸と香港では、日本のアニ メ「BLUE LOCK」とコラボレーションし、アニメ好きな若者をターゲットに特別バージョンのカップヌードルを販売しました。
香港では WeChatミニプログラム「Nissin Foodium」を茶餐店オーナー向けに展開し、ポイントを獲得して特典景品と交換 できるデジタルマーケティングを実施しました。これにより、ロイヤルカスタマーの創出を図 っています。
こうした活動を通じて、製品の知名度や認知度を高め、消費者に日清製品の魅力を体験していただくことを目指しています。
創業者 安藤百福氏の「食創為世(食を作ることで社会に奉仕する)」という企業理念のもと、当社は責任ある企業市民として持続可能な経営に取り組んでいます。食の美味しさや健康維持を提供し、持続的発展に貢献しています。
サステイナビリティ経営において、当社のビジネスの基盤である『食の安全・安心』を重点項目の一つとして取り上げてい ます。全従業員に対して食の安全安心の啓発活動を行い、品質管理チームでは社内向けにニュースレターを発行し、社員 のために最新の知識の積み上げを行 っています。
2021年からスタートしたフレッシュカット野菜サラダ製品に対しては、核酸検出検査(PCR法)を実施し、徹底した検査を 行 っています。
当社はグループ会社に上海安全研究所を持ち、中国の分析機関の認証である中国計量認証(CMA認証)を取得し安全対策を行っています。同研究所は、中国政府機関が主導する食品安全国家標準(GB)の分析法制定および改訂事業にも参加してお り、幅広い貢献を行っています。
当社の取り巻く環境は、不動産市場の低迷、地域の人口変動などの内的要因や地政学的緊張などの外的要因が顕在化して いるものの、中国が世界最大級の市場であることに変わりありません。中国本土や香港の着実な経済成長が戻 ってくると 信じています。
中国事業ではカップヌードル(合味道)の販売を伸ばすべく卸店との連携を強化します。加えて、高価格帯袋めんの販売 を伸ばしていきます。消費者は依然倹約志向が強いものの、潜在的な需要は大きいと見ています。日本への中国人旅行者は増加傾向にあり、日本の各地のラーメン店はとても人気があります。その味を自宅でも味わうことのできる出前一丁、 日清ラ王、日清チキンラーメンは必ず販売を増やすことができるでしょう。
非即席めん事業である卸店事業は、新たな商品やブランドを扱い始めており、再度販路の拡大を通して、ビジネスの拡大を目指していきます。
香港事業では、100%北海道産小麦粉を使用した北海道一丁、日清ラ王、日清チキンラーメン、ベトナムフォーなど、高 価格帯袋めんの販売拡大に注力しています。また、輸出にも力を入れていきます。冷凍食品に関しては、冷凍点心のプレ ミアム品、パスタ、うどん、ラーメンなどの販売拡大に取り組み、復活に力を入れます。
ベトナムビジネスでは、自国マーケットの販売強化と販売チャネルの拡大を継続して目指します。台湾販社は、引き続き卸店や主要小売店との取引拡大に努め、販売ボリュームの向上を図ります。韓国の Gaemi Foodは、主力商品であるクリス ピーロールの国内外での販売強化や、日清とのシナジーを高めます。オーストラリアでは、冷凍餃子の販売拡大を目指します。
2025年は巳年になります。蛇は一生のうちに何度も脱皮します。脱皮の目的は成長と変化への対応です。我 々も経営環境 の変化に適応すべく変化を続けることが成功への鍵だと理解しています。継続してグループの運営と組織を効率的に発展 させ、良い商品を作ることを基礎に事業の成果を最大化を目指し、当社の株主や投資家を含むすべてのステークホルダー に長期的な価値の創造を実現して参ります。そして、当社グループは地域社会の持続的な成長に貢献していきたいと思い ます。
創業者 安藤百福氏の『食創為世(食を創 って社会に奉仕する)』という企業理念のもと、美味しく安全で求めやすい食を通じ、消費者の生活を豊かにしていきます。
安藤清隆
董事長